古民家風の趣のある店内には、夜な夜な。ご主人宮野さんが作る料理に魅せられた人たちが集う。
ある日のコース(七千円)は、妖艶な味わいの「酔っ払い香箱蟹」に始まり、海の野味と呼びたい、たくましき味わいのめじなの焼き霜作り。続いて、脂が上品に乗った甘鯛を使った「かぶら蒸し」、青海苔がけのなまめかしい〆サバへと続く。
もうこれだけで、各種揃えられた銘酒の数々が空くが、たたみかけるように、命を噛みしめる旨さに唸る「白子の生刺し」、春の近づきに心が座る、「えんどう豆のすり流し」と続いていく。
さらには猛々しい味わいに、日本酒から赤ワインを所望する「鴨の燻製」が出て、「そばがき」が運ばれる。ここのそばがきは空気がふんだんに含まれ、噛むと香りだけを残し、淡雪のように消えてしまうそばのムースである。オリーブ油と塩胡椒で食べても面白い。
そしてそば。
第一陣は自家製唐墨とわさび菜のフェットチーネ風幅広麺のそば。オリーブ油と塩で。二陣は極細のせいろ。いずれも穀物としての甘みと力強さ、草のような香りに満ちた、素晴らしいそばである。
閉店